26人が本棚に入れています
本棚に追加
/108ページ
「みんな、これで…!」
僕は溢れんばかりの食べ物を手に、子供達の元へと戻る。
けれど、子供達はみんな、泣いていた。
急いで、クレアの元へと駆け寄る。
その身体はまだ温かだったけれど、もう、息を、していなかった。
それからしばらく、僕たちはクレアの傍にいた。
雨が降ってきて、クレアの身体がどんどん冷めてゆく。
翌朝、クレアの身体は完全に冷たくなり、動かなくなっていた。
クレアは、死んでしまった。
孤児院に戻った僕を待っていたのは、シスターのお説教だった。
そこには何故かミリィも一緒だった。
僕が出たとき、シスターを止めようとしてくれたらしい。
僕たちは洗いざらい、今までのことを打ち明けた。その間もずっと、ミリィは僕を庇ってくれた。
僕たち二人はたんまりと怒られた。
でも、幸い、シスターは優しくて、僕が持って行ったのは孤児院の食べ物だったからと、罪に問うことはなかった。
けれど、貧民街に行くことは、禁止されてしまった。
「私たちだって全ての子供を救って差し上げたい。けれど分かっているわね?
一人、十人助けられても、全員を助けることは出来ないわ」
シスターは悲しそうにそう言って、僕たちを抱き締めてくれた。
「ティトは間違ってないわ。
人が、見えている命を救おうとする心に、罪はないもの」
二人きりになって、ミリィはそう、励ましてくれた。
僕は罪を犯した。けれど、この気持ちに後悔しないと決めた。
僕は頑張って、いつか自分の力で、彼らを救えるようになろうと決意する。
けれど、僕は忘れていた。
どんなに小さな罪でも、罰は下るんだ。
最初のコメントを投稿しよう!