第二の扉 ―暴食―

12/12
前へ
/108ページ
次へ
「最近、街中に流行病が流行してねぇ。 今はもっぱら貴族様が買い占めてて、なかなか値段も下がらない。 材料も手に入らないから、買うなら急いだ方がいいかもねぇ」 薬屋の主人の言葉が胸を差した。 クレアとその兄の姿が、僕とミリィに重なった。 ミリィは、このままだと死んでしまうかも知れない。 僕たちは、互いに励ましあって生きてきた。 ミリィは僕の半分。 そのミリィが、居なくなるー… 理性より先に、手が動いていた。 僕は有り金を全て投げると、薬を乱暴に掴み、薬屋から逃げ出した。 僕は駆ける。 あの日を思い出しながら。 うしろから怒声が聞こえる。 そして、次の瞬間僕は地面に突っ伏していた。 衛兵のような男が数人、僕を押さえていた。 「おい貴様、何をしている!」 「ん…お前、貧民街によく居たガキじゃないか」 「何、では貴様、貧民街の盗人の仲間か!」 「違う!僕は盗みなんて…」 謂われのない罪を着せられそうになり、僕は反論する。 「じゃあこれは何だ!」 けれど、手に持った薬を指摘され、僕は何も言えなくなる。それでも、この薬だけは手放せない。 「おい、連れていけ!」 「待って下さい!この、この薬だけは、ミリィに…!」 叫びは虚しく、僕は衛兵に連れて行かれた。 やがて孤児院にも連れて行かれ、あの日の罪も明らかになってしまった。 それだけじゃない。 貧民街に出入りしていたことを理由に、盗みの常習犯として扱われた。 庇ってくれるミリィは、病に伏している。 僕は盗人として、牢に入れられた。 「ミリィは、助かったの?」 答えはない。 僕はどんな罰でも受ける。 けれどそれだけは知りたかった。 結局、僕はそれを知ることなく― 裁かれることとなった
/108ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加