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母はあろうことか正室の座を乗っ取り、私をこの家の跡継ぎにしようとしている。
私は憤慨した。
冗談じゃない、冗談じゃない!
誰かの欲望の道具にされるのも、自分の欲望を殺して生きるのも平気。
けれど、あの子を…可愛いエメリアを蹴落とすことになるのは御免だ…!
私は翌日からギルベール卿のお誘いを全て断った。
プレゼントも何もかもを拒否し、ひたすらギルベール卿を遠ざけた。
母は私の突然の態様に狼狽していたけれど、エメリアのことを思えば母の野望を叶えさせる訳にはいかなかった。
それからというもの、私は隙を見てはエメリアの部屋に入り浸った。
「お姉様、ギルベール様のこと、よろしいの?
素敵な方だったのでしょう?」
エメリアは心配そうに尋ねる。何も知らない可愛い妹。
きっとこの子は知れば傷ついてしまう。真実なんて無かったことにしてしまおう。
「良いのよ。私きっと、ギルベール家に嫁いだら堅苦しくて生きていけない」
「もう、お姉様ったら。はやく嫁ぎたいと仰っていましたのに」
エメリアと私は微笑みあう。
「エメリアにも会えなくなるわ。
そんなことになったら私、貴女を連れて逃げ出してやる」
私がそう言うと、エメリアはお腹を抱えて笑った。
この子の笑顔を守れるならば、白馬に乗った王子様にでも騎士様にでもなってみせる。そんなことを思っていた。
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