第三の扉 ―強欲―

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お姉様がギルベール様の縁談をお断りしてから、お屋敷には沢山の贈り物が届くようになった。 お姉様はそれらを一つも受け取ろうとはしなかった。 「エメリア、私はギルベール家に嫁ぐのは嫌なの」 お姉様は私の部屋に来ては、うんざりだというようにそう言っていた。 とても美しい、私の自慢のサーシャお姉様。 何の取り柄もない私を可愛がってくれる、ただ一人の大好きなお姉様。 何も望まなかったお姉様が、あんなに嫌がっている。 私、お姉様に何かして差し上げられるなら、といつも考えていた。 ある日、お父様とお話する時間が出来たときに、私は思い切ってお父様にお願いをした。 「お父様、サーシャお姉様とギルベール様の縁談を取り止めにして、お願い」 私の言葉にお父様は申し訳なさそうな表情で答えた。 「しかしエメリア、我が家は最早、没落貴族でしかない。この縁談がまとまれば、家は安泰なんだ」 私は唇をきゅっと噛む。 私は大切に育てられた。私にも多少の縁談話はきていたのに。 けれどその度に、お前には幸せになって欲しい、と言われ、縁談を断り育てられてきた。 私がどこかに嫁いでいれば、家は少しでも良くなっていたかもしれない。 そうすれば、お姉様が嫌な縁談に心悩ませることもなかったはず。 そんな私が原因だというのならば。 「では、ギルベール様に私を嫁がせて下さい!」
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