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私は美しくもなければ聡明でもない。
いつもお姉様と比べられ、お前に美貌があったら、と嫌味を言われたこともあった。
「しかし、ギルベール卿はサーシャにいたく執心しておられてなぁ…」
お父様は苦い顔をする。
私も、無謀なこととは知っていた。結局、私の気持ち一つではどうしようもないのだ。
結局、私は何もすることが出来なかった。
それから数日、私は、ギルベール様が遂にしびれをきらし、お姉様に会いに来たことを知る。
その日お姉様は部屋に自室に鍵をかけ、私の部屋に逃げ込んでいた。
「お姉様…」
「まさか家にまで来るとは思わなかったわ」
お姉様達の住む離れでは、ギルベール様とお姉様のお母様、お父様が必死でお姉様を説得しようとしていた。
「私、ギルベール様を見て参ります!」
私は意を決して部屋を出る。
お姉様を悩ませる男の姿を一度見ておきたかった。
「エメリア!?」
驚くお姉様の声を後目に私は離れへ急いだ。
離れには、未だかつてないほどの人集りが出来ていた。
私は息を大きく吸い、姿勢を正す。
凛と、私だって一人の貴族令嬢。
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