第三の扉 ―強欲―

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「ギルベール様はどなた?」 「エメリア!」 急に姿を現した私に人集りは驚き、殆どの人が恭しく頭を下げた。 その中で立っているのがお父様…そして、一人の端正な顔立ちの青年がいた。 その青年は私を見るとにこやかに笑い、膝を折って挨拶をした。 「サーシャの妹君…エメリア様ですね? お初にお目にかかります」 「ギルベール様ですね?」 青年はにこやかに頷いてみせた。 「私、貴方に聞きたいことがありますの」 私は意を決する。今まで人前に立ったことのない私。心臓が破裂しそうなくらいどきどきしていた。 「お姉様…サーシャの、何処を好きになったのですか?」 私の決意とは裏腹に、ギルベール様は少しきょとんととしたあと、さも当たり前のように答えてみせた。 「彼女は美しい。けれど私は他の、見た目しか見ていない貴族とは違います。 サーシャは、実に素晴らしい女性です。淑やかで、可憐で、儚げだ。 私は彼女を守りたいのですよ、妹君」 ギルベール様はさも素晴らしいことを言った風に振る舞っていた。 けれど、私は、きっと怒っていた。 彼は、お姉様のことを何もわかっていない…! 毎回中庭を素足で走り抜けては、私の部屋に忍び込むお姉様。 ドレスや堅苦しい場所が何より嫌いで、欲もなく、自由を愛するお姉様。 「失礼ですが、お姉様は貴方が思っているようなお方ではありません!」 私は大きな声を出してしまっていた。 そのまま踵を返し、部屋へと戻る。 「あと、貴方の贈り物も、お姉様は喜びません!」 最後に振り向いて、そう言う。ギルベール様の周りには沢山の高級そうな贈り物で溢れていた。 狼狽するお父様を振り切って、私は駆け出していた。
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