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いつものように、神父は教会に戻っていた。
しかし、今回は少しばかり不思議な感覚に陥る。
「君は一体、どちらなんだ…?」
神父が扉の先で見たものは、二人の姉妹両方の景観だった。
しかし、今扉の前にいるのは少女一人。
仮面をした彼女が姉か妹かを知る術はなかった。
「彼女は強欲な姉妹。
どちらかなど在りはしない」
純白の男が神父の様子を面白そうに見てそう言った。
神父は思い返した。
そう、最後、姉妹は混ざり合うように闇に墜ちていった―
彼女たちを分かつこと自体無意味なのだと悟る。
「貴女達は、互いの欲望を叶えあおうとした。そこに欲は確かに存在しました。
けれど、その姉妹愛を利用し、強欲と称したのは周囲の醜き謀略です。
貴女達に罪はない。神は貴女達の愛らしい小さな欲に罰を与えはしません」
神父が感じたもう一つの違和感。
それは彼女達が、全てを捨て追われても、最後まで幸せを感じていたこと。
それはただ姉妹であるだけの幸せ。
そんな彼女達を強欲と呼ぶことは出来なかった。
「これで、この場に集いし罪の半分が赦された。
赦されざる罪の教会。
さぁ、残りの罪を貴方は赦せるでしょうか、神父様」
そう言って、神父の顔を見る。
男は、まるでこうなることを知っていたかのようだった。
神父は感じていた。この場の罪は、きっと赦しを得ることが出来るものなのだ。
それを確かめるためにも、残りの扉を確かめなくては。彼らの告悔を聞き、許すことが神父の使命なのだから。
そうして、また次の扉に手をかける。
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