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私の生い立ちは、決して裕福とは言えないものだった。
けれど、不幸に思ったことは一度もない。だって懸命に生きていればいつか幸せになれると教わっていたから。
「ここが、王都…」
私は一人、王都の建物を見上げていた。
手にはいっぱいの荷物。田舎娘の私はこの華やかな王都ではさぞ浮いていることだろう。
「どうしよう、学校はどこかしら…」
手に持った地図を睨みながら一人思案する。
私は王都の学校に行くために村から旅立ち、今日、念願の王都に着いた。
それでも、王都は想像以上に広く大きくて…私は最初こそ浮かれて観光気分で歩いていたのだけれど、今ではすっかり迷子になってしまった。
「貴女、ミレーユさん?」
途方に暮れていた私の名前を呼ぶ声がして、思わず飛び跳ねてしまう。
「は、はい!ミ、ミレーユは、私ですが!」
あまりに驚いて変な返事をしてしまう。
振り向くとそこには優雅な洋服を纏った綺麗な女の子が立っていた。
「ふふっ…良かった、私貴女を探していたのよ」
女の子は上品な笑顔でクスクス笑っていた。
「私、貴女のルームメイトよ。来るのが遅いからちょっと探しに来たの。
丁度学章のある封筒を持っている子がいたから話しかけたら、当たりだったみたいね」
「えぇ!?すみません…で、学校はどこに…?」
探させていたかと思うととても申し訳なくなって、私は誤りながら尋ねる。
すると、女の子は一瞬驚いたような目をしたあと、堪えきれない、というようにクスクスと笑いはじめた。
「学校なら、貴女が今見上げている建物よ」
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