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一通り荷解きを終えて、私は大切に持ってきていた最後の荷物を机の上に置く。
「…あら、それ…聖書?」
ソニアがそれを見つけて私に尋ねる。
「うん」
それは古びた一冊の聖書だった。
中身は古い文字で書かれているのか、普通の文字さえ読めない私には一編たりとも分からない。
「村の教会にずっと置かれていたものなの。
村を出るときに、お守りにって…」
これを見ると懐かしい故郷を思い出すことが出来る。
いつかこの本を読めるようになったら、故郷の教会でみんなに聴かせてあげたい。
「へぇ…でも、それはしまっておいた方が良いんじゃないかしら?」
「そうね、無くしてしまったら大変だもの」
ソニアに言われ、私は本を大切に引き出しの中へとしまい込む。
私のことだ、と持って歩いていたらきっとどこかに忘れかねない。
それから私はソニアと他愛ないけれど楽しい会話をし、時間はあっという間に過ぎていた。
「もう消灯ね、初日から寝坊しても悪いわ。寝ましょうか」
ソニアがそう言ってランプを消し、私達は各々のベッドに潜った。
私は眠りに落ちる。
明日からこの学校での生活が始まるんだ、と胸を踊らせて…
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