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時乃は遠慮がちに聞いた。
「いろいろとありまして……。」
アリスの表情が曇った。
「仕方ないんです……。」
アリスは歯を食いしばって、涙をグッとこらえた。時乃は仕方ない気持ちで一杯で、どう声をかければいいか分からなくなってしまった。
(家族なんて気にしないのに………、第一、ここに親が住むわけ無いのに……)
アリスは机の前に座り、ぼんやりしていた。悪魔との衝突による、世界の崩壊を防ぐために今の世界に来のだ。昼休みに話していたカレンという人物はアリスの親友であり、共に戦う戦友でもある。
「演技、少しやり過ぎたかしら………もう少し加減すればよかったかしら…。」
あまりの演技力を少し恨んでいると、部屋の外から気配を感じた。
「だれ?」
ドアを開けるとそこにはカレンが居た。アリスは目を丸くした。
「なぜ貴女がここに?!今は向こうに居るはずでは?!」
「一部隊の隊長であり、一国の姫を護衛無しにこの世界に居させる事など有り得ません。そのことを考え、私が来たのです。」
カレンはアリスの行動に不満を持ち、部隊の人間を連れて来るよりかは自らが赴く事が一番だと考えた。
「でも、それだと貴女の直轄部隊はどうしたの?誰かにまかせたの?」
カレンは予想していた質問が来たことで、少し笑みをこぼしながら言った。
「私の部隊は近衛部隊に統括させました。現在の司令官は姫様ではなく、姫様の父上殿のシュトレーゼ様が行っています。」
アリスは、疑問に思った。部隊の統括指揮権はアリスに委託されているはずなのになぜかアリスの父上が指揮していた。
「姫様には言っておきますが、この世界に居る限り姫様のサインはただの飾りに過ぎません。そのことは気をつけてください。」
確かに、アリスのサインが効くのは国に居る時だけしか意味をなさない。
「こんな堅苦しい話をするのはどうかと思うので、一度この町の散策に出られてはいかがですか?」
「それもそうね、何かあったときに迅速に対処できないからね。」
そういうと、白のワンピースを取り出した。
「では、私は先に出ておきますね。」
カレンは先に玄関に向かい、アリスは部屋の扉を閉め、着替え始めた。
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