最愛

2/3

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/94ページ
曇天の空の下で佇むリュラ。手には普段持ち歩かない最愛の弟の写真 写真を見つめるその瞳は悲しみに満ちていて。 幼くしてその生を終えた弟。何も伝えられないまま、抱き抱えた腕の中で静かに眠りについた 最愛の弟の最期は、笑顔だった ゴゥッ… 突然の突風に手から写真が離れ飛ばされた。 「…!」 リュラは急いで追う。風に煽られ写真は不規則に空を舞い、地面へ落ちた 彼の、ヴィアトの足元に。 「……?」 ヴィアトは落ちた写真を拾った。前からはリュラの姿 「…あ…えと、この写真、お前の?」 「……ああ」 拾った写真をリュラに返し、どこか気まずさを覚えた 「……え、えーと…そ、その写真!弟?」 精一杯の明るい声で問う。 「ああ。」 わかってはいたが、短い答えにヴィアトは焦る。考えてみれば一対一でまともに会話をしたことがない。ぐるぐると頭の中で話題を探していると、リュラが口を開く 「……体は弱いが、明るい子だったんだ」 「…へ?あ、弟?」 「ああ、疑うことを知らない純粋な弟で……それが命取りになった」 「…っ…」 抑揚のない声で静かに話す。
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加