2人が本棚に入れています
本棚に追加
1.
一人暮らしを始めた初日の朝に、母親の声が響いた。
『起きなさい。もう七時ですよ。いよいよ遅刻する時間帯に差し掛かって参りましたよ。起きなさい。起きましょう。こら、起きてよ』
朝の七時。無機質な母親の声がする。
訂正。母親の声を発する目覚まし時計。
あれ、実家にあった時はメリーさんの羊だった筈なのにな……
一人暮らししてから初めての夜が明けた。
鈍い眠気を噛み砕きながらキッチンへ向かう。
今日は食パンにチーズとハムを乗せてレンジにいれてみよう。
そんな事思いながら、もそもそと買い物袋を漁る。
「……あれ」
空、である。
「……あ」
そうだった。今日から一人暮らし。
ご飯は一々買ってこなくては家に無いのだ。
ちくしょう。
最初のコメントを投稿しよう!