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4.
「おお」
同時刻、204号室。
彼女の前には等身ほどもある冷蔵庫が聳えていた。
「これで社長があげられる物は全部だって。冷蔵庫……こんなに大きくても、君は物を入れないだろうけれど」
「いえ、何かしら使うから大丈夫です」
大きなものが欲しいのは子供の頃からの本能だから仕方がない。
美谷さんは一息ついて、ああ、と声を漏らした。
「今、そこで変な子に会ったんだよ」
「石島くんかな?」
「いや、山内って表札の家から出てきたよ」
「ああ、じゃあ石島くんだ」
再度言うと、笑った美谷さんの顔が渋く見えた。気がした。
「お隣さんなんです」
「石島君、ね」
美谷さん、納得して笑顔まで溢して見せてくれる。
流石、わたしと長い付き合いなだけあって、変なこだわり分かってる。
「じゃあ帰るよ。……俺はいいけど、くれぐれも先輩を荷ほどきの手伝いなんかに呼び出さないようにね」
「善処します」
靴を履いてジャンパーを着た美谷さんがへらりと笑った。
「じゃあまた、明日会社で」
「はい」
明日からまた、私の日常が帰ってくる。
廊下、寒。
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