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4.
不機嫌そうな多磨さんが箒でゴキブリ共を払いながら部屋に入ってきた。
「石島くん。ベランダは掃除いらないくらい綺麗だったよ」
「じゃあこの部屋手伝って貰えますか?」
「……掃除をさせたいのなら部屋から出ていって」
「はい」
少しだけ鶴の恩返しみたいだと思って笑った。
「おお……」
秘書って凄いんだな。
塵ひとつ無い部屋を見渡して少しビビった。
「じゃあ、これ雑巾返すよ」
絞られた雑巾を手渡され、私は軽く頭を下げた。
「こんなに綺麗にしてくださって、ありがとうございました」
「うん。困ったらまた呼んでね」
彼女は耽美な顔を無下にする豪快な笑顔を浮かべ、私の肩を叩いた。
「私達今日からお隣さんだし」
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