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3.
そして、今に至る。
「多磨さん」
石島くんは無意味に掃除機のコードを引っ張り抜いていた。
「部屋を綺麗に掃除なさってくださったのは大変嬉しいのですが、私は家が好きではないのであまりいないのです」
「その頭を駆使して遊んでるの?」
真っ金々に染まった石島くんの髪の毛を指差す。
帽子を被られてしまった。
「金色いいと思うよ、黄金虫みたいで」
石島くんは帽子を押さえたまま動かなくなってしまった。
銀髪にしたかったのをしくじったのかな。だから隠すのかな。
「地毛じゃないよね」
「植毛でもありませんよ」
「そっか……じゃあなんだろう」
とりあえず私は鞄から取り出した物を石島くんに被せてみた。
サイズぴったり。あれ、レディース用のはず。
「……いきなりカツラを被せさせられたら、流石の高校生でも虚しくなりますよ」
「ウィッグだよ。若い子が文化祭で貞子に使うあれと同じ」
石島くんは一度外したウィッグとしばらく見つめ合い、再び無言で装着した。
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