お隣

4/5
前へ
/20ページ
次へ
3. そして、今に至る。 「多磨さん」 石島くんは無意味に掃除機のコードを引っ張り抜いていた。 「部屋を綺麗に掃除なさってくださったのは大変嬉しいのですが、私は家が好きではないのであまりいないのです」 「その頭を駆使して遊んでるの?」 真っ金々に染まった石島くんの髪の毛を指差す。 帽子を被られてしまった。 「金色いいと思うよ、黄金虫みたいで」 石島くんは帽子を押さえたまま動かなくなってしまった。 銀髪にしたかったのをしくじったのかな。だから隠すのかな。 「地毛じゃないよね」 「植毛でもありませんよ」 「そっか……じゃあなんだろう」 とりあえず私は鞄から取り出した物を石島くんに被せてみた。 サイズぴったり。あれ、レディース用のはず。 「……いきなりカツラを被せさせられたら、流石の高校生でも虚しくなりますよ」 「ウィッグだよ。若い子が文化祭で貞子に使うあれと同じ」 石島くんは一度外したウィッグとしばらく見つめ合い、再び無言で装着した。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加