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さよなら。
手の中をすり抜けた火は、思い出をゆっくりと燃やし始めた。
澄んだ夜空に、煙りと一緒に思い出なんて消えちゃえばいい。
だって、あたしを苦しめるだけだもん……
吹き抜けた風を避けるようにポケットに手を突っ込んだ。
手に伝わるクシャリと乾いた感触。
取り出すと、それは五枚の紙切れ。
胸が大きく跳ねる気がした。
いや、針で突かれたように痛かった。
あたしはそれを、風に飛ばされないように一枚づつ火の中に入れた。
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