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暗闇にのまれた京の街。
少女が1人うごめく影のみ。
その少女、名を春桜姫奈という。ふらふらと覚束ない足取りから見るからに疲れているとわかるが、幸か不幸か通行人などないにも等しい。
気にする者などいなかった。
(なんとか、ここまで来たのはいいけど、
どーしようかな、行く宛もないし、体力ももうもたない。
いや、その前に、
ここ、どこ?)
頭がくらりと揺れる。
どうにでもなれ、と姫奈は意識を手放した。
ぱたりと倒れた姫奈を気にする者などいるはずもなく、辺りにふぁさ、と砂埃が舞うだけだ。
京のひとにとって夜に出かけるなんていう選択肢は最初からないのだから、姫奈を拾うような人物などいるはずがないのだ。
静かな夜の闇に、か細い姫奈の呼吸音だけが響いていた。
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