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~再び訪れし試練の時~
同日、19時、自宅前。
学校が終わった後、奈々子と一緒に遊んでいたためかなり遅い時間になった。
遊び疲れて帰宅すると、見知らぬ怪しい男が自宅の前に立っていた。
その男は首からカメラを提げ、落ち着き無く、家の前で煙草を吸っている。
男は私の姿に気付いたのか、煙草の火を消して近寄ってきた。
「すいません、あなた…、榎本さんじゃないですか?」
「…そうですが、あなたは?」
「自分は週刊スクープの柳田という者です。
今週の記事はもう読まれましたか?他誌でも構わないのですが…。」
週刊スクープ?確かゴシップ誌の1つだったと思うけど…、
「よく意味が分からないんですが…、スクープさんが何で私の所に?」
すると、柳田と名乗った男はニヤニヤと笑いながら私に言った。
「またまたぁ、こっちもプロなんでちゃんと分かってるんですよ?
事件解決の知らせを聞いてどう思ったか、少し話を聞きたいんですよ。」
「あのぅ…、話が見えてこないんですが…、もしかして人違いでは?」
「もう、惚けないで下さいよ、あなた、榎本さんでしょ?“…”の。」
え…?何なの…?彼は今、何と言った…?
…何かが、私の背筋を這っているような、不気味な感覚。
黒澤の時とは違う…、はっきりとした、奇妙な悪寒。
「ごめんなさい…、もう1度言ってください。」
「え…?もしかして本当に知らなかったとか!?
ご家族のどなたもニュースとか新聞とか見てないんですか?」
「…だから!!さっき何て言ったか教えて!!」
私が声を荒げると、柳田はゆっくりと口を開いた。
「おたく…、“榎本光”さんの娘さんでしょう…?」
なぜ…?この男から、その名前が出てくる…?
事件が…、解決?今まで解決してなかった…?
「あの…、自分は日を改めますんで、お話を伺えるのならここに連絡を…。」
柳田は、私に名刺を手渡して、そそくさと去っていった…。
どういう事だろう、あの事件は解決して無かったって事…?
あの柳田の口ぶりからすると、最近になってやっと解決したようだけど…、
「お父さん…、あの事件は、終わってなかったの?」
いや…、まずは今週の週刊スクープを確かめないと…。
まさか、本当に載っているのか?私の…、母の事件が…!?
了
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