~自らが生きた証~

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「自論ではありますが…、忘却とは即ち喪失であり、それは損害と同義です。 良き思い出も、辛き過去も、些細な出来事も、全ては自らの生きた証。 例え無意味とも思える、ほんの小さな事柄であっても、 知っていて損になるという事は絶対にありません。 記憶、知識、経験…、その全てが自身の人生における財産となるのです。」 「ちょっと、行き過ぎな気もするけど…、私もその考え方は好きかも。」 自分が体験した事は自分だけの物、唯一の持ち物になる。 例え同じ事を、同じように体験しても、全員の感想が同じになることは無い。 だからこそ人は、自分の記憶の、自分だけの思い出を大事にするんだ。 「そういう意味では、件ってかなりの資産家って事になるね?」 「…私はまだ、それほど長く生きてはいませんが?」 あぁ、説教染みた事を言ってたけど、まだ中年だったな…。 「それでも、私よりは遥かに年上でしょう?…っていうか、件って今何歳なの?」 「…43歳です、確かに…、遥かに年上です、2回りも違いますから…。」 件って、年齢の話になるといつもテンション下がってるよな…。 それよりも…、父より年上でこの格好は無いだろう、普通。 「尊敬します…、いろんな意味で。」 「…私にとって不本意な意味である事は、間違いなさそうですがね。」 了
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