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~食事~
9月12日、20時、ファミリーレストラン。
「すまんな、こんな所で…、年頃の娘が行くような店は知らなくてな。」
昨夜、黒澤に連絡を取ったが、仕事の都合で今日この場所に待ち合わせになった。
「気にしないで…、都合を付けてくれてありがとう。」
黒澤は何も言わずにメニューを見ている。
「あのね黒澤?あの話なんだけど…、」
「先に飯だ、お前は何にする?」
黒澤は、私にメニューを差し出してそう言った。
…まぁ、すぐに終わる話じゃないし、食べた後でもいいか。
とりあえず、黒澤との食事を楽しむ事にする。
私は父と来ていた時に、よく食べていたペペロンチーノを頼み、
黒澤は、知ってか知らずか、父がよく食べていたのと同じステーキ定食を頼んだ。
「黒澤さぁ、何でそれ頼んだの?」
「…そんな気分だっただけだ、深い意味は無い。」
成程…、奈々子に聞いたんだな?
私は何気なく、食事をしている黒澤を眺める。
ステーキにお箸を使っているので、とても食べにくそうだ…。
「…これから、大丈夫か?」
いきなり声を掛けられて、ハッと我に返る。
私の答えを、分かっていたのか…。
「どうしても、聞きたいことがあるの…、聞いてもいい?」
「…どうしても聞きたいんだろう?」
…味噌汁を啜りながら、黒澤がそう言った。
「どうして、ここまで私に気を使ってくれるの?」
私が聞くと、黒澤はゆっくりとお椀を置き、口を開いた。
「お前を気に入ったから…、では理由にならんか?」
「…私のどこが気に入ったの?」
「頭が切れるところと、度胸と…、口の悪さだ。」
…もう、これ以上聞くことは無い…、というより、何も思いつかない。
しばらくの間、沈黙が続いた後、逆に黒澤が質問してきた。
「…大神崎とは、まだ会ってるのか?」
「え?まぁ、会ってるけど…、何でそんな事聞くの?」
私がそう聞くと、黒澤は俯きながらこう言った。
「俺の不安の1つが、奴の事だからだ…。」
了
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