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「この世界はいずれ憎魔のものとなる」
開口の第一声からして理解不能であった。
「聞いているのか八坂翔太」
「はあ……」
目の前に、少女がふんぞり返っている。
ちんまりと未発達な身体。
5頭身ぐらいだろうか。まるで人形のようだ。
どこからどうみても”ちっちゃいお子様”が勘違いして胸を張っているようにしか見えない。
手に、どこかのオモチャ屋さんで買ってきたらしい、魔法少女アニメのお約束グッズ的なステッキを持っている。
「もはや逃れようのない運命。未来。世界時計は死の秒針を一刻、また一刻と推し進めている。
地球と呼ばれるこの惑星世界は、我らが花魔族にとり闇の箱船、闇のエデンである。
貴様らは望むと望まざるに関わらず肉欲とソドムの道を突き進んでいるのだ」
ステッキからふわふわと長いリボンが垂れている。少女がステッキを振るたび、リボンから虹色のはなびらがこぼれた。
「あのうどちらさまで」
「我の名はキュートな花悪魔メルメル、えっちな世界征服を夢見る美少女憎魔である」
――たとえばの話。
一部の、そう、極めて限定的な話だが、ごく一部の人間にとって、世界は極めて不条理だ。
高校生、八坂翔太も、そう感じる一員だった。
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