トレラジック

「誰もが言う言葉はいつもありきたりだ」

別に大した人生ではなかった。誰かの為に生まれて、今も誰かのために生きている。

誰のためだと聞かれてしまえば、困ってしまう。
けれど、そんなものだろう人の人生も俺の人生も

「これからどうするんだ」

シューズを脱いでいると、後ろから声をかけられた。神田が後ろを向くと、そこにはコーチの原田が立っていた。

「何がですか？」

神田がそう言うと、原田は少し困った表情になりながら言った。

「進路だよ、頼むからあまり困らせないでくれ」

「ああ、そのことか」

神田がそういうと、原田は神田の真似をしながら言った。

「ああ、そのことか……じゃねえだろ、３年で引退したってのに進路ほったらかして毎日毎日放課後ここで練習してんのはあまり関心しねえな、走りを続けんのなら構わんが、確か就職だったよな？」