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「何やってるんですか」
「離せ!殺るぞテメー…ッ」
男は、自分を押さえ付けつける
青年に殴り掛かろうとする。
「ーッ、くそっ、くそお!」
…が、青年は
それをいとも容易く避けた。
私を捕らえてた人を
捕らえるなんて…
凄い力…!
私は、ドクドクと高鳴る
胸を手の平できゅっと押さえた。
青年は左手で
男の頭をぐっと下に押し、
残った右手で男の両手を
掴み上げた。
「いてててて!」
さっきまでの威勢は
何処へやら。
男は「すまねえ、すまねえ!」と
呆気なく謝った。
「女子にこういう事をするのは
感心しませんね。…みた所武士の様ですが…。」
青年は男の謝罪をスルーして
淡淡と言う。
「あ、あのっ、もういいです!
ホントいいですから!
ぶつかってしまった私も
悪いですし…。」
チラッと男の方を見ると、
男は苦しそうにこちらを見た。
「あ、ありがとうございました」
青年は、「そっか」と言って
手をぱっと離した。
と、男はそそくさと
青年の側を離れ
「ーっ、覚えてろ!
次会った時にはただじゃ
おかねーからな!」
とお決まりのダサい
捨て台詞を吐いて
逃げて行った。
ー…っていうか、
この人…何処かで。
きりりとした瞳に
群青色の髪の毛。
高く結い上げていて、
…焦漆黒の着物を身に纏ってる。
「………」
誰だっけ。
歴史上の人物だっけ…
…?
「あんな情けない台詞
よく吐けるよね。」
青年はクククと笑う。
「え…と……」
… あ…。
そうだ。
………忘れる訳が無い。
あの、 昨日の夢の…。
「あの、私、貴方を
昨日夢で見たんです!」
私は思い切って
切り出した。
「……へ?」
青年は瞳をぱちくりとさせ
状況がよく読めない、という
表情をした。
「昨日の夢でも私、貴方に
助けられました!」
事実。 紛れも無い事実。
ホントに見たんだから。
真剣に言う私を見て
青年はまた笑った。
「はは、面白いね君。
…俺は君の事初めて
見るけどね。」
ーっ。
彼の受け答えは
少しSっ気を帯びていて。
彼もまた、私に問った。
「ー誘ってるの?」
「ーっ、なんで
そうなるんですかー!」
赤面する私を見て彼は
またクスクスと笑った。
…よく笑う人。
ていうか、この時代の人は
この手の話を逆ナンと
とってしまうんだ。
私は一つ学んだ。
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