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「お母さん、行ってくるね!」
と玄関前から聞こえる様に言う。
すると、家の中から微かに
お母さんの声が聞こえて。
いってらっしゃい
と言ってた。
「ほら。梨花、早く早く!」
自転車に跨がった唯ちゃんが
私を急かす。
「うん!わかってる!」
私も自転車に乗り、
家をようやく離れた。
「あーあ!あんたのせいで
またギリギリじゃん!!
てかギリギリアウト?」
胸ポケから携帯を取り出し、
時計を確認する唯ちゃん。
「ごめーんっ…今日本当の本当に
変な夢みてたんだよー。
なんかさ、なんかさ!」
私は今日見た侍の夢について
唯ちゃんに聞いて貰おうとした。
が、唯ちゃんは携帯の画面を
私の顔間近にもってきて。
「時間!見る!8:21だよ!?
夢の話ならまた学校でね。
とばすよ!!」
「あッ!ホントだ遅刻しちゃうっ」
唯ちゃんはいつでもこうやって
いつめんでは一番しっかり
しててお姉さんなんだよな…。
餓鬼餓鬼って皆に馬鹿にされる
私と唯ちゃんを比べると、
なんだか胸が痛かった。
「おはよー諸君!!」
「?」「…」
後ろから叫び声がした。
と、唯ちゃんが苦笑する。
「…アイツ恥ずかしくないのかね
いっつもあんなんで…。」
「あ、あお!!」
赤信号で止まっている私達の
丁度真後ろで
急ブレーキして止まったのは。
山中 葵(やまなかあおい)
通称あお だった。
「あ…あお。頭。はねてる…」
私はあおの髪のはねてる部分を
指指した。
「ん?あっ、またー!?
…もう、マジで困るーっ」
あおは、背が高くて
常に自分だけのファッションを
追求している女の子。
まだ11月上旬なのにタイツを
履いているのはあおだけ。
「あおってさ、漫画みたいに
はねるよね。髪の毛。」
唯ちゃんがあおの寝癖を
ツンツンとつっついた。
「あへっ!さわんないでよもう!」
あおはわざと声を変えて
言った。
「キモい!!!」
唯ちゃんはお決まりの台詞と
一緒にあおの頭を思い切り
パンッと叩いた。
と、信号が青に変わり。
私達は学校に向かって
また自転車を漕ぎ始めた。
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