1.終わりから始まり

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きっと代わりにこいつが泣いてくれているのだろう。っとそんな下らない事を冷静な頭で考えていた。抱き寄せた相手は腕の中でまだ泣いていた。暫くその状態が続いたが、苦では無かった。 一体、何十分こうしていただろうか。ようやく腕の中の奴は泣き止んだようで、自分の胸板を軽く押してきた。それに逆らう事などするはずもなく、そっと離した。 まだ潤んだ瞳でこちらを見詰めてくる。掠れた声で、たった一言小さく謝れば自分の傍を離れて行った。 何故だかその手を掴みたくなった。自分と同じくらいだった背中は、何故だか小さく見えた。 この感情はあの時とは違う。好きでもない奴を抱き締めたい、なんて一度もない。気になって気になってしょうがないなんて。 そんな下らなくも、不思議な感情を消え入りそうな背中を見送り独り考えていた。 .
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