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『ーさて、今日から11月だからね。これから年末に向けて慌ただしくなって来る。すると、どうなると思う?はい遼平!』
いきなり前原課長から名指しで呼ばれ、一気に眠気が吹き飛んだ。
『…すいません、ボーっとしていて…
何の話しでしたっけ。』
遼平はまさか寝ていたとも言えず、恐る恐る前原に訊き返した。
『会議の時にボーっとするヤツがあるか!
遼平、お前が忙しいのは分かる。
しかし、そこはキチンとけじめを付けて仕事に取り組んでくれんと、俺だって上に勤務態度を報告しなきゃならないんだからな。』
前原はさほど怒った様子はなかったが、少し困ったような顔をした。
『申し訳ございません。以後、気を付けます。』
遼平は前原にしっかり頭を下げた。
『頼むよ、本当に。さて、何の話しだったかな…
そう!年末に向けて慌ただしくなる。街には人々が溢れ、その溢れかえった人々に紛れて犯罪者は息を潜め、やがて一般市民に牙を剥く。
そうなる前に検挙し、地域の安全を守るのが生安課の仕事だ!
みんなもくれぐれも気を抜かずに公務に当たって欲しい。以上!!』
前原が言い終わると、各自デスクに戻り今日の仕事の準備をする。
遼平がデスクの引き出しから地域別の犯罪発生件数を纏めたファイルを眺めていると、後ろからニヤニヤしながら森本純也が話しかけて来た。
『随分と眠そうだけど、昨日は優子ちゃんと遅くまで一緒だったのかい?』
『まぁ久しぶりに会った訳だから、そりゃ遅くまで一緒に居る事になるさ。
ただ、今日が会議なのすっかり忘れていたよ。少し後悔してる。』
『会議を忘れるのが遼平らしいよな。優子ちゃんとはどんな話しをしたんだ?』
相変わらずニヤつきながら純也は訊いた。
そのニヤニヤ顔に無性に腹が立って、
『どんなって…普通の話しだよ。
お互いの仕事の話しとか、本の話しとか。
変な事訊くなよ。』
と、遼平は少し素っ気ない返事を返した。
そんな遼平の苛立ちを感じたのか、純也は神妙な顔を作り、遼平の耳元に顔を近づけ今までよりも小声で訊いた。
『本当か。俺はてっきり、そろそろお前が優子ちゃんに結婚を申し込むもんだと思って、遂に昨日プロポーズしたのかと思ってたよ。』
遼平は呆気に取られて口を開いた。
『だって、お前と優子ちゃん付き合ってもう4年だろう?
お互いにもう落ち着いても良い歳じゃあないか。』
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