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頭の中で純也に対して言い放った後、遼平は優子の事を考えていた。
出会ったのは、今から4年程前になる。
当時26歳だった遼平は、まだ制服警官として勤務していた。
身長170cm、体重65キロ。体格は警察官としては小さかったし、容姿も特別良い訳でもない。(純也曰わく、遼平は素朴な織田裕二らしい。良く分からないが)
そんな地味な警察官に当然彼女などできる訳もなく、遼平もそんな気も無く過ごしていた。
そんな遼平が非番の日、偶然寄った本屋で働いていたのが当時21歳の優子だった。
肩の辺りで切り揃えられた黒い髪、日焼けなどしたことのないような白い肌。
すっと通った鼻筋に、少し切れ長の目。
美人、という表現がピッタリだった。
つまり、遼平は優子に一目惚れしてしまったのだ。
それから非番のたびに本屋を訪れ、勇気を出して話しかけ、2ヶ月目にしてようやくデートの約束を漕ぎ着けたのだった。
今度一緒に夕飯食べに行きませんか。
日本で最も一般的かも知れないデートの誘いに、優子は一瞬目を丸め
『私ですか?』と遼平に訊いた。
遼平が、はい、と答えると
ちょっと考えて
『いいですよ。津川さんと本のお話しをしていると楽しいですし、
私もちょうどゆっくりお話ししたいと思っていた所ですから。』
とニッコリ笑った。
その時遼平は舞い上がり過ぎて、1人でそんなに強くない酒を大量に煽り、酔って道端で寝てしまうという失態を犯してしまったから、しっかり覚えている。
『ねぇ、さっきから何ニヤニヤしてるの?』
訊かれて遼平はドキッとして反射的に首を振った。
『いや、何でもない。ちょっと昔の事思い出してさ。』
『もしかして、デートに誘った後に酔っ払って道端で寝てた事思い出してた?』
優子が笑いながら訊いてきた。
4年も付き合うと、女性は相手の考えてる事が読めるのだろうか。
『まぁ、ね。何か思い出しちゃって』
『あの後、確か遼ちゃん風邪引いたんだよね。
私、看病しに行って移された記憶あるもん。』
優子が笑いながら言った。
4年前とあまり変わらないヘアスタイルに、切れ長の目。
純也曰わく、有名人で言うと柴咲コウ似らしい。
純也に初めて優子を紹介した時に言っていたのを覚えている。
あいつは例え好きだな。全く。
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