4/6
前へ
/33ページ
次へ
頭の中で純也に対して言い放った後、遼平は優子の事を考えていた。 出会ったのは、今から4年程前になる。 当時26歳だった遼平は、まだ制服警官として勤務していた。 身長170cm、体重65キロ。体格は警察官としては小さかったし、容姿も特別良い訳でもない。(純也曰わく、遼平は素朴な織田裕二らしい。良く分からないが) そんな地味な警察官に当然彼女などできる訳もなく、遼平もそんな気も無く過ごしていた。 そんな遼平が非番の日、偶然寄った本屋で働いていたのが当時21歳の優子だった。 肩の辺りで切り揃えられた黒い髪、日焼けなどしたことのないような白い肌。 すっと通った鼻筋に、少し切れ長の目。 美人、という表現がピッタリだった。 つまり、遼平は優子に一目惚れしてしまったのだ。 それから非番のたびに本屋を訪れ、勇気を出して話しかけ、2ヶ月目にしてようやくデートの約束を漕ぎ着けたのだった。 今度一緒に夕飯食べに行きませんか。 日本で最も一般的かも知れないデートの誘いに、優子は一瞬目を丸め 『私ですか?』と遼平に訊いた。 遼平が、はい、と答えると ちょっと考えて 『いいですよ。津川さんと本のお話しをしていると楽しいですし、 私もちょうどゆっくりお話ししたいと思っていた所ですから。』 とニッコリ笑った。 その時遼平は舞い上がり過ぎて、1人でそんなに強くない酒を大量に煽り、酔って道端で寝てしまうという失態を犯してしまったから、しっかり覚えている。 『ねぇ、さっきから何ニヤニヤしてるの?』 訊かれて遼平はドキッとして反射的に首を振った。 『いや、何でもない。ちょっと昔の事思い出してさ。』 『もしかして、デートに誘った後に酔っ払って道端で寝てた事思い出してた?』 優子が笑いながら訊いてきた。 4年も付き合うと、女性は相手の考えてる事が読めるのだろうか。 『まぁ、ね。何か思い出しちゃって』 『あの後、確か遼ちゃん風邪引いたんだよね。 私、看病しに行って移された記憶あるもん。』 優子が笑いながら言った。 4年前とあまり変わらないヘアスタイルに、切れ長の目。 純也曰わく、有名人で言うと柴咲コウ似らしい。 純也に初めて優子を紹介した時に言っていたのを覚えている。 あいつは例え好きだな。全く。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加