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『最近、仕事忙しそうだね。』 優子がデザートのティラミスを食べながら訊いてきた。 『あぁ、生安課の方は相変わらずヒマなんだけど、説得任務がね。 2日に一回、たまに連続で呼ばれることもある。 月で計算したら25人以上は説得してるよ。』 『凄いね。やっぱり景気悪いから思い詰めちゃう人も多いのかしらね…』 『確かに不景気と何らかの関係性はあると思う。不景気だと凶悪犯罪も増えるし、とにかくロクな事がない。』 優子が頷きながらティラミスを食べ終え、ナプキンで口を拭いた。 『遼ちゃんの仕事が凄く大事なのは分かるし、応援してるけど、 やっぱりもう少し一緒にいる時間欲しいな…』 『すまない。今は特に時期が悪いから…冬は統計的に自殺者が増えるんだ。言い訳じゃないけど』 そこまで言って遼平は強調して付け加えた。 『本当だよ。』 『遼ちゃんを疑ってないから大丈夫。昔から嘘つけないもんね、遼ちゃんは。』 『そうかな?説得任務に就いて3年経った今は変わったと思うよ。 自殺志願者相手に救いようのない偽善を振りまいてる。 つまり、嘘をついてる。説得する時自分が警察官だという事も明かさない。警察官と分かった瞬間に怯えてパニックになって飛び降りるヤツが稀にいるから。』 遼平はふぅ、と息を短く吐き、続けた。 『優子をデートに誘った時の俺は、確かにウソを付けない純粋野郎だったけど、今は変わってしまったよ。』 優子はしばらく黙っていたが、少し悲しそうな笑顔で言った。 『確かに、説得任務に就くようになってから遼ちゃんはどんどん自信に満ち溢れていって、昔の奥手な感じは無くなっちゃったね。 でも遼ちゃんは、私にはウソ付けないんだよ。 私には分かる。それだけで充分。』 遼平は優子の目を見つめた。 確かに、何もかも見透かされているような、不思議な感覚がある。 しかし嫌な感じは一切なく、寧ろ優子に見つめられると安心してしまうような気がするのだ。 『そうだな。俺は優子にはウソ付けないよ。 仮に付いたとしても、すぐバレる気がする。』 遼平が言うと、優子は笑って 『ありがとう。』 と一言だけ言った。 『食べ終わったし、そろそろ出ようか。』 俺が伝票を持って席を立つと、優子が訊いてきた。 『今日はもう帰っちゃうの?』
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