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遼平は時計を確認した。
午後8時を少し回った所だった。
『そのまま帰るにはまだ早いな。どこか他に行きたい所、ある?』
レジで2人分の会計を済ませながら優子に訊いた。
優子は少し照れくさそうに
『たまには私の部屋、来ない?ここからなら歩いて行けるし、遼ちゃんの独身寮からもそんなに離れてないし。』
と言った。
そういえば優子の部屋、何ヶ月も訪ねてないや。
遼平はそう思った。
遼平の住む部屋は警察の独身寮で、恋人を連れ込むのは多少抵抗があったので、基本的に優子と体を合わせる時は優子の部屋だった。
(同僚の純也も同じ独身寮に収まっているが、純也はお構いなしに女性を連れ込んでいるようだ)
遼平は少し悩んだあと、優子に言った。
『そうだな、ここの所全然行ってないし。
たまには優子の部屋でゆっくりするのもいいかも。』
勿論、その言葉には多少(いや、だいぶ)下心を含ませて言った。
優子はそれを察したのか、恥ずかしそうに俯き笑った。
レストランを出ると昼間とは打って変わって冷たい風が体を撫で、息を吸うと冷えた空気が鼻を通った。
遼平はスーツの上着を羽織り、隣でブラウンのコートに袖を通している優子を待った。
こうやって並ぶと、身長155cmの優子が凄く小さく感じる。
『行こうか』
そう言って遼平は優子の左手を右手で握った。
ひんやりとした優子の左手が、やがて遼平の右手の体温に包まれて行くのが分かった。
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