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俺の家は、銀[シロガネ]一族に仕える家系…らしい。
“らしい”というのは、仕えるべき銀一族を一人も見たことがないからだ。
見たこともない人物に仕えろなんて言われても無理な話しだ。
それなのに…
それなのにだ――
*****
澄み渡る空はどこまでも青く、時折吹く風に乗り、桜の花弁が舞う。
そんな青空の下、紅い飛沫が飛び散った。
「紫月<しづき>!真面目にヤらんかああぁぁぁ!!」
響き渡る怒鳴り声に、木々の枝で休んでいた鳥達が一斉に逃げ出した。
「…私は何時でも真面目です」
紅く染まった左腕を抑え、黄金色の瞳は師匠を映す。
眼前の刀の切尖は気にしていない様だ。
「殺す気で向かって来いと…あれ程申したではないくぅわぁぁぁ!!」
真っ白な髭を振り乱し、老人は地団駄を踏む。
禿上がった頭から湯気が立ち上ってきそうな勢いだが、言われている本人は冷めきっていた。
わざとらしい溜息をしながら、自分の刀を腰に納める。
「師匠…お言葉ですが、私は主である銀一族を見たこともないのです。
護る対象がいないのに、この様な修行をしたところで何の役に立ちましょう?」
冷たい月を思わせる瞳の青年は、師匠に背を向けて歩き出した。
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