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自慢の髭を撫で、賢瀏斎は紫月を置いて行ってしまった。
「親父に認めてもらえだと?反吐が出る」
握った手から紅い雫が滴り落ちた。
*****
俺が強くならなくたって、晃碧<こうへき>がいる。
あいつは全て、俺より優れた跡取りだ。
大体、長男はあっちなんだから、俺は何しようがいいじゃねぇか。
毎日毎日毎日…クソジジイに斬られ殴られ笑われて!
ムカつくっつうんだよ!!
*****
「月など見ずに、わたくしを見てください」
紫月の背中に、するりと細腕が絡み付く。
胸に頬擦りする女から匂う香水が、紫月の鼻を突いた。
「如何なさいましたか?」
女の手に薄く形のいい唇を寄せた。
「紫月様の余韻に浸っておりましたの」
豊かな胸に紫月の手を導いた。
軽く開いた唇、潤んだ瞳。
紫月には、どの女も同じに見える。
「どいつもこいつも…」
「今何と?」
作り笑顔の呟きは、女には聞こえていない。
「…何も?」
女の望み通り、唇を奪った。
開いた口に蠢く舌を入れ、更に深く噛み付く。
紫月の手の動きに身体を痙攣させ、歓喜の声を上げる。
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