其ノ壱 紫月の章<銀の城>

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自慢の髭を撫で、賢瀏斎は紫月を置いて行ってしまった。 「親父に認めてもらえだと?反吐が出る」 握った手から紅い雫が滴り落ちた。 ***** 俺が強くならなくたって、晃碧<こうへき>がいる。 あいつは全て、俺より優れた跡取りだ。 大体、長男はあっちなんだから、俺は何しようがいいじゃねぇか。 毎日毎日毎日…クソジジイに斬られ殴られ笑われて! ムカつくっつうんだよ!! ***** 「月など見ずに、わたくしを見てください」 紫月の背中に、するりと細腕が絡み付く。 胸に頬擦りする女から匂う香水が、紫月の鼻を突いた。 「如何なさいましたか?」 女の手に薄く形のいい唇を寄せた。 「紫月様の余韻に浸っておりましたの」 豊かな胸に紫月の手を導いた。 軽く開いた唇、潤んだ瞳。 紫月には、どの女も同じに見える。 「どいつもこいつも…」 「今何と?」 作り笑顔の呟きは、女には聞こえていない。 「…何も?」 女の望み通り、唇を奪った。 開いた口に蠢く舌を入れ、更に深く噛み付く。 紫月の手の動きに身体を痙攣させ、歓喜の声を上げる。
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