其ノ壱 紫月の章<銀の城>

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「……」 口を手で塞ぎ、紫月は下腹部へ指を這わせた。 女は自ら脚を拡げ、腰をくねらせ強請る。 「良家のお嬢様も廓の遊女も、裸になれば全部同じだな」 熱い身体とは真逆な気持ちが、声になって出た。 快楽に狂った女の耳には入らない。 男が自分に挿入ってくるのを待ち侘びている。 望みが叶うと、紫月の背にしがみつこうと腕を伸ばした。 紫月は女を俯せにし、腕を掴んで枕に顔を埋める。 くぐもった喘ぎ声と卑猥な音が、暗く冷たい部屋に響く。 窓から見える月は、汚れなき白い光りを静かに放っていた。 ***** 俺は夢を見る。 そりゃあ誰でも見るだろう。 でも、俺のは最近、同じ様な夢だ。 今夜もいつもの夢らしい。 目の前には月と銀髪。 床についてもまだ引き摺っている髪は重そうだ。 でも…どんな色より俺の眼を奪う。 顔は髪で隠れているが、その身体の線の細さは女だろうな。 数え切れない程に女を抱いてきた経験が、俺にはこの人が女だと確信させる。 振り向きそうになったその瞬間―― ***** 「紫月様、お目覚めの時間です」
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