其ノ壱 紫月の章<銀の城>

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見飽きた顔が、鼻を袖で隠して覗いていた。 睨む主人を無視し、窓を開けて換気を始める。 「あぁ~臭いったらありません」 言いながら、着替えやら手拭いを紫月の上に置いた。 「その女の匂い、早く流して下さいね?」 優秀な側近は、さっさと部屋から出て行った。 紫月は鼻をひくつかせると、眉間に皺を寄せて風呂へ向かう。 途中で艶やかな碧い髪と瞳に会った。 「お早う御座います兄上」 「……」 頭を下げた弟を見下し、無言で去って行く。 紫月は何事も無かった様に歩いた。 ***** この女顔…人が頭下げてやったのに相変わらずだ。 何が楽しくてコイツと一緒に飯食わなきゃなんねぇ? あああ!?こっち睨んでんじゃねぇよ!! 「私の顔に何かついているのか?」 「いえ、今日も一段とお美しいなと」 女ならこの台詞で喜ぶ。 「私は女ではない」 はいはい知ってます。 アンタはこの台詞で怒る。 おキレイなお顔で睨まれても、何とも感じない。 母親が違うと、同じ日、同じ時に産まれようと、上下関係ができる。 まぁそのお陰で俺は遊べるんだ。 感謝してるさ…嫌いだがな。
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