其ノ壱 紫月の章<銀の城>

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***** 今日も賢瀏斎の怒鳴り声が、鳥や獣の安らぎを邪魔する。 「また女遊びなんぞして!! いつか刺されても儂は知らん!」 「耶奈嘉<やなか>の野郎…チクったな」 舌打ちする弟子に、賢瀏斎は拳骨をおみまいする。 「耶奈嘉は儂の自慢の息子じゃ! 主の夜遊びが酷いと相談しに来ない日は無いぞ!? その腑抜けた根性、叩き直してくれる!!」 抜刀と同時に向かってくる賢瀏斎を、体を捌いて躱す。 紫月も刀を構え、賢瀏斎の二撃目に備える。 向かい受けた刀を押しやり、後方へ移動。 紫月は懐に手を忍ばせた。 「“追爆符[ついばくふ]”!!」 放った五枚の札は、生き物の如く賢瀏斎へ襲い掛かる。 「甘い!!」 森の木々を巧みに使って札の爆撃を避ける。 最後の一枚は、賢瀏斎の札で相殺された。 しかし、賢瀏斎の背後には、刀を振り被って待機する紫月がいた。 「今日こそ私の勝ちですっ!!」 口元に笑みを湛え、紫月は刀を振り下ろした。 賢瀏斎は振り向きもしないまま、刀を鞘へ戻す。 紫月の刀は賢瀏斎の頭上でぴたりと止まった。
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