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沈む日輪
どこで、間違えたのだろう。
一人、丘の上から黒い海を眺め、僕はひとりごちる。
海岸沿いを見下ろすと、他の避難民が黒山の人だかりをつくり、ひしめいている。
おんおんと、響いてくるのは悲嘆と絶望のおめきであった。
分単位、いや、秒単位で最期が迫っているのだ。
彼らにも、
僕にも
そしてこの国にも・・・
じっとりと汗にまみれる、右手に握られた固い感触。
もうこの中にしか、彼女との想い出はない。
君を、護れなかった・・・・・・
あのとき、あの兵士たちに、向かっていくべきだったのだ。
たとえすぐに撃ち殺されるだけだったとしても。
男としてはそうすべきだったのだ。
でも、連れ去られる中 君は精いっぱいの笑顔で、生きてと云った。
また逢える、とも。
だけど・・・・・
滲む視界に映る曇天を、オレンジ色の炎が切り裂き、こちらに迫ってくる。
海岸に悲鳴が響く。
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