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佐奈は訳が分からないように俺と菜乃を交互に見たあと、椅子から立ち上がった。
「私、ちょっと紗彩さんに呼ばれてるから行くね。お兄ちゃん、あとはお願い」
「ああ」
佐奈はパタパタと走って部屋を出ていく。
二人だけになった途端、部屋に沈黙が流れる。
「……解熱剤に栄養剤、か」
俺は薬を置いて菜乃を一瞥する。
「飲んだ方が、早く治るとは思うけど……」
「……うん」
菜乃は俺と反対側にある窓の外を眺めたまま頷く。
「無理か?」
「……」
俺の問いには答えずに、菜乃はただ体を震わせた。
「ごめん。無理じゃないなら最初っから飲んでるよな」
謝りながら薬を机の上に戻す。
そして、手を振って扉のほうに歩き始める。
「でもま、薬飲まないならゆっくり寝た方が早く治るだろ。男の俺がいても寝づらいだろうから、俺は行くわ。なんかあったら連絡してくれ」
菜乃は力なく微笑みながら頷いた。
「うん。ありがとう」
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