薬の恐怖

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その時、薬と水が入ったコップが視界に入った。 「……」 私はしばらくそれを睨み付けたあと、体を起こして薬を手に取った。 「――ッ!!」 そして、水と一緒に勢いよく飲み込む。 だが、喉にかかる前に体中の皮膚が一気に粟立ち、込み上げてきた強烈な吐き気とともに布団の上に薬と水を吐き出した。 「ごほっごほっ」 苦々しく咳き込み、胸を押さえて呼吸を整える。 やっぱり駄目だった。 いくら飲み込もうとしても、胃に到達するまでに体が拒否反応を起こしてしまう。 注射なども見るだけで震えが止まらなくなる。 トラウマと言うものなのだろうが、こういうものは簡単にはどうにもできないとしみじみ思う。 知哉君も発作が起きるというが、理玖君や朱莉ちゃんといい、皆何かしらの問題を抱えている。 でも、理玖君や朱莉ちゃんはこちらの世界に来たことで問題を解決しつつある。 「私も……変われるのかな……」
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