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菜乃は確かに顔色がよくなっているが、実際はまだ微熱が引いていない。
歩く程度なら問題はないようだが、完治には至っていないのだ。
「さっき先生が来てね、夕方なら時間が空いてるから、お姉ちゃん検査に来てくれって言ってたよ」
「そうか。なら俺が連れていくよ」
一人で行かせるわけもいかないし。
「え?私もいくよ」
「ううん。佐奈ちゃんは休んでいて。最近私の世話ばかりしてあまり休めてないでしょ?大丈夫だからゆっくりして」
菜乃は佐奈の頭を撫でながらそう言い、それに俺も頷いた。
「そうだぞ。俺が付き添うから、佐奈は休んでくれていたらいい。こっちはどうにかしておくから」
そう言うわけで、佐奈はエストリエ城に残ってもらい、俺と菜乃でエストリエの城下町に向かっていく。
「手を貸さなくても大丈夫?」
俺が隣をゆっくり歩いている菜乃に尋ねると、菜乃は笑いながら頷いた。
「うん。ありがと。歩く程度なら大丈夫だよ」
菜乃は今、寝間着とも普段着ともとれる薄緑色の服の上に、暖かそうなケープを羽織っている。
傍目から見ても病人っぽい雰囲気を醸し出しているので、優しいエストリエの人達は道を開けてくれる。
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