拉致

8/12
前へ
/2188ページ
次へ
途中途中で道を尋ね、病院を目指していく。 病院からかなり近くまで来たときに、路地を抜ければすぐと言われたので、少し暗めの路地へと足を向ける。 このような建物に囲まれた路地はどこにでもあり、地元人の近道として使われているようだ。 「あともう少しみたいだけど、まだ大丈夫?」 「うん。大丈夫だよ。ありが――」 菜乃の言葉を遮るように、何かが割れるような音が路地に響き渡った。 「なんだ?」 「なんだろう……」 俺と菜乃は顔を見合わせて、音がした方に向かった。 音がしたのは路地の曲がり角、その先だ。 俺達が音がした方に行ってみると、そこでは何人かの男が揉み合っていた。 というより、何人かの男が一人の人を押さえつけているようだ。 「おい、何をしている」 喧嘩しているのならただ見逃すのも目覚めが悪い。 一方的なリンチなら尚更だ。
/2188ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27562人が本棚に入れています
本棚に追加