奔走

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「……ん……や君!!」 体を揺さぶられながら、耳に微かに音が届く。 「ぅ……あ……」 目が徐々に開き、ぶれた視界が入ってきた。 「知哉君大丈夫!?」 今度ははっきりと声が聞こえてきた。 「ああ、大丈夫……ッ!!」 返事をしながら体を起こそうとしたが、突如後頭部に走った激痛に顔をしかめて手をやった。 手がぬめりとしたものに触れ、確認するとべっとりと血がついていた。 「くそ……へましたな……」 現状が思い出して、苛立ち気に吐き捨てる。 「ごめん。ごめんね知哉君……」 俺が顔を上げると、菜乃が目を赤く腫らして涙を流していた。 手足は縛られていなく、自由な様子だ。 「気にするな。菜乃のせいじゃない。それよりもここは……」 俺は晴れてきた視界を周りに巡らせた。
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