奔走

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「でも理解に苦しむな」 俺はため息を吐きながら菜乃の元に戻る。 「俺が魔法使いなのはわかっているはずなのに、手足も縛ってないなんてな。魔法で壁をぶち抜いてやる」 壁に向かって手を突き出しながら集中する。 「ダメなの、知哉君」 詠唱を始めようとしたのだが、それを菜乃が制してきた。 「ダメって何が?」 「私達、移動中に何か薬を注射されたみたいで、魔法が使えなくなってるみたいなの」 「なんだって……!?」 俺は驚きながら魔法を詠唱してみる。 だが詠唱に答えて魔法が発動する気配はない。 それどころか、魔力が湧き上がってくる感じすら微塵もない。 「おいおい……」 俺は焦りながら左手の甲に目を向ける。 ドレインを意識して力を使おうとするが、魔法式が現れることも光ることもなかった。
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