27562人が本棚に入れています
本棚に追加
「でも理解に苦しむな」
俺はため息を吐きながら菜乃の元に戻る。
「俺が魔法使いなのはわかっているはずなのに、手足も縛ってないなんてな。魔法で壁をぶち抜いてやる」
壁に向かって手を突き出しながら集中する。
「ダメなの、知哉君」
詠唱を始めようとしたのだが、それを菜乃が制してきた。
「ダメって何が?」
「私達、移動中に何か薬を注射されたみたいで、魔法が使えなくなってるみたいなの」
「なんだって……!?」
俺は驚きながら魔法を詠唱してみる。
だが詠唱に答えて魔法が発動する気配はない。
それどころか、魔力が湧き上がってくる感じすら微塵もない。
「おいおい……」
俺は焦りながら左手の甲に目を向ける。
ドレインを意識して力を使おうとするが、魔法式が現れることも光ることもなかった。
最初のコメントを投稿しよう!