奔走

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菜乃から小瓶の一つを受け取り、手の中で転がす。 「……これを飲んだからって、魔法が使えるようになるってわけじゃないな。たぶん」 飲んですぐに魔法が使えるようになるのなら、そんなもの渡すわけない。 また、生かして連れてこられているのだから、飲んで死ぬこともあり得ないだろう。 俺は迷いなく小瓶の蓋を開けると、中身を一気に飲み干した。 喉に形容しがたい味が通り、不快感が鼻を突きぬける。 「まずっ……」 呻きながら小瓶をポケットにしまい、口を押える。 「飲んで、大丈夫なの?」 菜乃が心配そうに訊いてきた。 「ああ、問題ないだろう。薬の組織の話が出た段階で、なんとなく魔法薬のことも調べてた。魔法薬は基本的に毒性が強いみたいだから、解毒薬を飲んでないと本当にまずい。だから……」 俺は視線を菜乃の手元に落とす。 菜乃の手に握られている小瓶の中には、まだ並々と液体が残っている。 蓋を開けた様子もない。
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