27562人が本棚に入れています
本棚に追加
菜乃から小瓶の一つを受け取り、手の中で転がす。
「……これを飲んだからって、魔法が使えるようになるってわけじゃないな。たぶん」
飲んですぐに魔法が使えるようになるのなら、そんなもの渡すわけない。
また、生かして連れてこられているのだから、飲んで死ぬこともあり得ないだろう。
俺は迷いなく小瓶の蓋を開けると、中身を一気に飲み干した。
喉に形容しがたい味が通り、不快感が鼻を突きぬける。
「まずっ……」
呻きながら小瓶をポケットにしまい、口を押える。
「飲んで、大丈夫なの?」
菜乃が心配そうに訊いてきた。
「ああ、問題ないだろう。薬の組織の話が出た段階で、なんとなく魔法薬のことも調べてた。魔法薬は基本的に毒性が強いみたいだから、解毒薬を飲んでないと本当にまずい。だから……」
俺は視線を菜乃の手元に落とす。
菜乃の手に握られている小瓶の中には、まだ並々と液体が残っている。
蓋を開けた様子もない。
最初のコメントを投稿しよう!