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今、問題なのは、菜乃に薬を飲んでもらうということだ。
俺は菜乃の前に膝を着く。
「菜乃、つらいと思うけど、薬飲んだ方がいいよ」
言葉を続けるにつれて、菜乃の顔が曇る。
詳しい事情は知らないが、菜乃が薬を飲むことは、酷いトラウマを蒸し返すことになる。
今魔法が使えなくなっている薬は、注射で目隠しをされているときにされたから受け付けてしまったようだが、本来ならそれすら厳しいはずなのだ。
「で、できない……」
菜乃の震える唇から声が漏れ、手から小瓶が滑り落ちた。
小瓶はコロコロと転がり、俺の爪先に当たる。
俺はそれを取り上げながら、唇を噛み締めた。
菜乃は頭を抱え、体を震わせながら泣き出してしまった。
ただでさえ薬を投与されたなんてことを知って、身の毛もよだつ思いをしているのだ。
さらに薬を直接飲めなんて酷というもの。
だが、それでは……。
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