奔走

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俺は立ち上がって壁に向かって歩き始める。 菜乃が飲めないというなら、どうにかここを連れ出して病院に行くしかない。 それでも結局薬を摂取しなければいけないだろうが、口から飲むよりましだし、他に何か方法があるかもしれない。 部屋は完全に閉ざされている。 一つある扉も分厚い鉄でできているらしく、魔法なしでいくら叩いても開きそうにない。 部屋中探しても隙間さえも見当たらない。 ただ一つあるとすれば、天井の隅にある通気口。 だがその大きさがあまりに小さすぎる。 30㎝四方といったところ。 あれじゃあどうやっても通り抜けられない。 結局数十分探しまわしたというのに、何の成果もあげなれないまま、愕然として壁に手をつく。 ……先程飲んだ薬は本当に解毒剤だったらしく、少しずつ魔力を感じ始めてはいる。 だが、初級魔法すら使えない微弱な程度だ。
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