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おそらくこの薬は、脳が魔力を感じる神経を一時的に麻痺させているのだ。
実際に魔力がなくなっているわけではないのに、使えないのがもどかしい。
俺が部屋を調べ始めてから1時間程経ったころ、見るからに菜乃の様子がおかしくなった。
先程泣き止んで、部屋の隅でじっとしていたのだが、手が力なく床に垂れている。
俺はそれに気づき、訝しげに菜乃を見た。
「菜乃?」
呼びかけても返事がない。
出口調べを中断し、菜乃に駆け寄って肩に手を置く。
そして、驚いた。
ケープの上からでもわかるほど肩が汗で濡れているのだ。
「おい!!」
俺は呼びかけながら顔を覗きこんだ。
菜乃の顔は汗でびっしょりと濡れており、赤く染まった頬に髪が張り付いている。
「はぁ……はぁ……大丈夫……」
一応意識はあるようだが、息が荒くとても大丈夫には見えない。
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