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そして、すぐに菜乃から顔を離すと、手で菜乃の口を強く覆った。
「飲め!!」
短く、きつく命じる。
あまりの動揺か、俺の言葉を受けて、菜乃の喉が動いて解毒薬が口から降りていくのを感じた。
俺はしばらく菜乃の口を押え、吐き出さないことを確認すると、やりきれない思いで手を放す。
「と、知哉君……?」
菜乃は青いような赤いような顔で、口を両手で押さえて震えていた。
俺は菜乃から顔を逸らし、視線を合わせないようにしながら言葉を紡ぐ。
「悪いとは思ってるけど、謝らないよ。こうでもしないと、菜乃が死んでいたかもしれないんだ」
菜乃を見ないまま一方的に言ってしまうと、立ち上がって再び出口を探そうとする。
だがその時、扉の方に人の気配した。
続いて鍵の開く金属音が聞こえ、重々しく扉が開いた。
扉の向こうにいたのは、何人かの男。
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