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「……これで満足か?」
静かに尋ねると、朱莉は乾いた笑いを浮かべて頷いた。
「ああ、うん。満足だよ。やっぱり理玖は強い」
俺が棍を引くと、朱莉は仰向けのまま空を見上げた。
「ごめんね。ずっと引き籠っていて」
「いや、悪いのは……俺だから」
ぽつりと呟く。
朱莉は笑いながら首を振った。
「違うよ。理玖は悪くない。やっぱりお母さんのことは誰も悪くない。あれは、事故だから」
朱莉は目を閉じて腕で顔を覆った。
「この間は、ただビックリしちゃっただけだよ。私もまだ子どもだよね。
今日はね、ちょっと理玖がお母さんに勝ったってのが、少し信じられなくて理玖と戦ったんだ。今までは私と戦うとき、少し手を抜いたんでしょ?」
「……」
朱莉の問いには答えずに、視線を落として押し黙った。
実際手加減をしていたつもりはない。
ただ、戦いづらくて、本気を出せていなかったのは確かだろう。
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