屈託

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「あれは……勝ったなんてものじゃない。ただ、明菜さんが手を抜いているところに、俺が適当に振った棍が当たっただけだ……」 俺は力なく朱莉の横に腰を下した。 お互い話さずに沈黙が流れる。 ふと、朱莉が言った。 「理玖はさ、いつからお母さんのこと知ってたの?」 俺は少し眉を下げて、ほっと息を吐いた。 「ずっと確信があったわけではない。初めに思ったのは、朱莉の名前を聞いたときにはなんとなく、な。明菜さんに娘がいることは知っていたが、名前までは聞いていなかった。それで、所々で思うところがあって、間違いないって所まで」 普通に考えればありえない話だった。 俺達は偶然こちらに飛ばされた。 なのに、そこで会ったのが昔事故で植物状態にした人の娘なんて、普通ありえないはずなのだ。
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