国王

5/51
前へ
/2188ページ
次へ
火澄君は、目をすっと細くして真剣な顔になった。 「それで、その佐奈ちゃんなんだけどね。変な噂が流れて、軍が動いていると聞いたんだ」 「軍って、ミネルヴァ国の軍?」 私は信じられない思いで訊き返した。 「うん。その軍だよ」 火澄君は頷いて肯定する。 どういうことだろう。 ミネルヴァ国の軍は、大型の魔物が出たときや遺跡の調査、凶悪な犯罪集団が出たときに動く組織だ。 私達がこちらに来てからは、特に大きな事件も起きていないようないので、ブレスで動いているという話はてんで聞いたことがない。 それがどういうわけで佐奈ちゃんのことで動くというんだろうか。 「この噂は信憑性に欠けるから、僕としては伝えようかどうか迷ったんだけどね」 火澄君はそう言いながら顔をしかめ、手を持ち上げる。
/2188ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27562人が本棚に入れています
本棚に追加