国王

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クロトを操っている優衣さんは、凍りついた表情のまま携帯電話を取り出し、どこかに電話をかけ始めた。 小声で何か会話をすると、優衣さんはすぐ通話を終えた。 優衣さんは言葉を発せず、部屋の中の誰もがわからないという表情を浮かべ、一言も言葉を発しない。 唯一悠斗さんだけは、肩をすくめながら苦笑していたが……。 たっぷり十数秒くらい流れた。 沈黙に耐えきれずに、俺が何か言おうと口を動かしたとき、俺達と軍人達の間が光りだした。 それは転移の光だった。 何事かと思いながらも身構える。 光が収まると、視界には四人の人が立っていた。 二人は明らかに軍人。 一人は軽装の俺達より少し年上そうな男の人。 そして、もう一人は白衣を着て黒縁眼鏡をかけた人。 俺達が以前遺跡であったミネルヴァ国直属の研究員だという月島 祐介さんだった。 「な――」 なんで、という言葉が口の中でそうになったとき、一人だけ浮いている軽装の男がいきなり走り出した。
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